日本取引所自主規制法人は2026年1月、「内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック」を公表しました。
上場企業で相次ぐ不祥事の再発防止策を体系化した内容です。同じ時期に公表された東京商工リサーチの調査は、この問題の背景にある構造をより具体的な数字で示しています。
「内部統制の不備」開示は増えている
東京商工リサーチの調査によれば、2025年度に「内部統制の不備」を開示した上場企業は41社・42件で、これは2012年度以降で3番目に多い水準です。
ハンドブックが「体系化した再発防止策」を必要とするほど、この種の不備が繰り返し発生している構造があるということです。
原因の半数近くは「人材不足・知識不足」
同じ調査で見過ごせないのが、41社のうち15社が不備の原因として「関連部門の人材不足または担当者の知識不足」を挙げている点です。約4割弱の会社が、仕組みの欠陥ではなく、担当者・体制の不足を原因として自ら開示しているということになります。
この数字は、内部統制の不備が必ずしも「悪意ある不正」や「複雑な仕組みの欠陥」から生まれるとは限らないことを示しています。
むしろ「担当できる人が足りない」「引き継ぎが不十分で知識が属人化していた」という、ごく現実的な体制面の課題が土台にあるケースが少なくないということです。
グループ会社が多いほど、この構造は増幅される
子会社・関連会社を多く抱える会社では、この人材・知識不足の問題がグループ全体に広がりやすくなります。
本社の担当者が異動・退職すると、その担当者が個人的に把握していた「この子会社は特殊な機関設計になっている」「あの法人は役員の任期が近い」といった情報が、引き継ぎ資料に残っていなければそのまま失われます。
Excelでの台帳管理は、この属人化と相性が悪い運用です。
ファイルの所在・最新版がどれか・入力ルールが担当者の頭の中にしかない、という状態は珍しくありません。担当者が変わるたびに、後任者は一から関係者に聞いて回ることになります。
ハンドブックが示す方向性
JPXのハンドブックは、不祥事の再発防止策を体系化する内容ですが、体系化された仕組みが機能するためには、その土台となる情報(グループ各社の機関設計・役員構成・資本関係)が、担当者個人の頭の中ではなく、組織として参照できる形で存在している必要があります。
仕組みを整えても、土台となるデータが属人化したままでは、同じ種類の不備が形を変えて繰り返される可能性が残ります。
まとめ
内部統制の不備は、複雑な不正よりも「人材・知識の不足」という地味な原因から生まれるケースが少なくありません。
グループ会社の基本情報・役員情報・資本関係を、特定の担当者に依存しない形で残しておくことは、この構造的なリスクへの現実的な備えになります。
本稿は公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の法令解釈や自社の対応要否は専門家にご確認ください。
参考
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